関節リウマチでよく行なわれる手術
関節リウマチにより関節破壊が進行すると日常生活動作能力(ADL)が低下し、それにともなって生活の質(QOL)も悪くなってしまいます。
まず第一には薬物療法でリウマチの活動性をコントロールし、筋力トレーニング・関節を動かす可動域訓練などのリハビリテーションを継続しなければなりません。
このような努力にもかかわらず痛みが減らない場合や、関節障害のために歩行が困難など、日常生活に影響が出る場合は手術療法が適応となります。
手術療法としては、第1に破壊された関節を人工関節に置き換える方法が有効です。
最近は手術テクニックおよび人工関節の材質・デザインも進歩し、さらに優れた長期成績が得られています。人工関節の平均寿命が15年ぐらいということを考えると、人工関節を50歳代ぐらいで行うのは少し早すぎると以前は言われていました。
しかし人工関節再置換術も多くなった現在では、若い人にも手術を勧めるケースが増えています。どの年代の方でも、基本的な考え方となるのは、「痛みを取り除き、生活のレベルを向上させよう」ということです。
滑膜切除術
関節の腫れと痛みが強いが、レントゲンでの関節の状態が比較的保たれているといったケースでは滑膜切除術が適応となります。炎症を起こして腫れた滑膜を取り除くことで症状を改善する手術です。
術後は明らかに腫れや痛みが改善されるので、薬の量を減らすこともできます。
関節固定術
動かなくてもあまり困らないような関節で、関節の変形のために力が入らなかったり、痛みが強くて生活に支障をきたしているようなときには、関節を固定するのが良い方法です。関節固定をすると痛みがとれます。
手関節(手の力が入れやすくなる)・指関節(他の指と物をつまめるようになる)・足関節(歩行時の痛みがなくなれば、動かなくてもそれほど困りません)でよく行われる術式です。
足趾関節形成術
リウマチの足の変形で多いのが三角状変形です。
足のゆび(足趾)の付け根部分の関節が脱臼して足趾が重なりあって、靴が履きにくくなり、変形により出っ張った部分に痛みが生じます。また、足の裏の皮膚が厚くなり、痛みのために歩行が辛くなります。このようなときには、足趾の付け根の関節のとびだしている骨をけずって変形を矯正すると痛みも見かけもよくなります。
人工関節置換術
病気が進行して、関節破壊が著明になった場合には、関節を人工関節に入れ替える「機能再建手術」が適応となります。人工股関節は15年以上、人工膝関節は20年以上安定した状態を保ちます。
最近では人工肩関節、人工肘関節などの上肢にも良好な成績の手術を行うことができるようになりました。
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人工肘関節全置換術の
手術後のレントゲン像 |
人工膝関節全置換術の
手術後のレントゲン像 |
正面像 |
側面像 |
第1/2頚椎固定術
脊椎の関節にリウマチがおこってくると、脊椎の骨の不安定性が生じます。
特に首(頚椎)によくおこります。頚椎の中には脊髄が通っていますので、神経の通り道を狭くしてしまうと、手や足がしびれたり、力がはいらなくなったりします。
第一頚椎と第二頚椎の間でよく脱臼が起こるので、首を前屈したり背屈したりした状態でレントゲンをとったり、頸椎MRIで狭窄の程度を評価します。
神経症状の改善や、麻痺の予防のために固定術をおこないます。
脊髄の神経症状が進行していくようなら、早めに予防的手術行う場合があります。
* いずれの手術を受けられる場合でも、担当の先生とよく相談してください。