|
変形性頚椎症とは?
ヒトの背骨(椎骨)は、通常、首の部分に7個の椎骨(頚椎)、胴体の部分に肋骨とつながっている12個の椎骨(胸椎)、腰の部分に5つの椎骨(腰椎)があり、そのうちの頚椎の部分に加齢現象が加わり、それが原因で、首が痛かったり、肩が凝ったり、手がしびれたり、歩きにくくなったりする病気の総称を、変形性頚椎症と呼びます。
頚椎におこる加齢現象とはどの様な変化をさすのでしょうか。(-運動器疾患の基礎知識の背骨について-を参考に次の文章を読んで頂けたらと思います)ヒトは年をとるにつれ、顔のしわが増える様に、頚椎でも椎間板が変性をしたり、骨棘という骨の出っ張りができたり、靱帯が肥厚してくるといった加齢に伴う変化が生じてきます。これらの変化により、ヒトによっては脊髄が押されて脊髄の症状が出たり(頚髄症)、神経根が押されて手のしびれ、痛みや力が入りにくいといった症状がでたりします(頚椎症性神経根症)。
どのくらいの人に起こるの?
もちろん、誰にでも加齢によるそういった変化は起こり得ますが、特に生まれつき脊柱管の狭い人や、過去に激しいスポーツや頚部を動かす頻度の多い仕事をされてきた人に若干多く見られるようです。
変形性頚椎症の検査について |
|
どんな治療があるの?
治療には、保存療法と手術療法があります。手術をしないで治療する保存療法には、
a) 薬物療法 b) 理学療法 c) 装具療法 があります。
各々の症状に合わせて順番に治療法を選択していきます。個々の治療法に関して紹介していくことにします。
a) 薬物療法
通常、頚部痛や肩こりを主訴とした場合には、非ステロイド系消炎鎮痛剤、筋弛緩薬、胃薬の組み合わせの処方を最初にする医師が多いようです。処方を受ける際には、過去に胃十二指腸潰瘍になったことがあるか、薬の副作用が以前あったかなどを担当医師に告げなければなりません。概して鎮痛効果が強い消炎鎮痛剤は、胃粘膜に障害を与えることがあり注意が必要です。そのような既往がある患者には、COX2選択性の消炎剤を処方するか、筋弛緩作用のあるマイナートランキライザーという抗うつ剤を処方することが安全だと言われています。また、症状が軽い場合には消炎鎮痛剤を含んだ湿布や塗り薬だけを処方することもあります。夜も眠れないほどの神経痛や手のシビレがあったり、進行性の筋力低下が見られているような場合には、神経の炎症を早期にとる目的で短期間副腎皮質ステロイドを内服して頂くこともあります。
b) 理学療法
牽引療法、温熱療法、電気治療、レーザー治療、マッサージ治療などがあります。
各々の治療は患者さんに時間の余裕がどれだけあるか、効果がどれだけ見られているかによって治療法を組み合わせて考えていくことになります。最近は各々の治療効果を医学統計学的に分析してどの治療法が本当に効果があるかを調べる研究が盛んに行われる様になっています。
自然経過で症状が良くなってしまうことも多くあり、医療を受けたから症状が改善したのか、自然経過で症状が改善したのかを分析するといった事を明らかにする研究で、その結果をまとめて本にしたものまで出版されています(Neck
and Back Pain by Alf L. Nachemson et.al など)。しかし現段階では理学療法のGolden
Standardといったものは確立されていません。
c) 装具療法
変形性頚椎症で装具(頚椎カラー)治療を行う場合は、上肢のシビレや痛み、筋力低下を伴うような頚椎症性神経根症で他の治療法が無効であった場合や頚椎症性脊髄症で行います。頚椎症性神経根症の場合には、神経根が炎症をもって太くなっていることが多く見られ、頚部を動かさずに安静に保つことで神経根の炎症がとれ、神経症状が改善してくることを目的に行います。頚椎症性脊髄症でも同様に脊髄部分の安静をとる目的でカラーを装着して頂くことにしています。当院では、朝起きたときにより強く神経症状が見られる場合には、夜間寝ている間にカラーを装着して頂き、日中に症状が強い場合には、寝る時、食事をとる時、風呂に入るとき以外は基本的にずっと装着して頂くことにしています。カラーを長くつけていると頚部の周りの筋肉が弱くなるからかえって良くないという治療者もいますが、基本的にカラーを装着して頂くぐらい症状の進んだ患者には、神経麻痺を進行させないために必要な治療であり、またこれにより良好な治療結果を得ています。
装着期間は、2か月から3か月を目安にしていますが、カラーをつけて2週間を超えても症状が全く改善しないような方にはその時点で装具治療は中止にすることにしています。
手術療法は、頚椎症性神経根症の場合にはほとんど必要がなく保存療法で改善することが多いようです。ただし頚椎症性脊髄症で、下肢にまで症状が出ていたり、画像的に脊髄の圧迫が高度の場合には軽度の外傷で脊髄損傷を引き起こすことがあり、手術療法を選択する事があります。手術方法は前方除圧固定術と後方除圧術があります。もともと脊柱管が狭い場合には広範に除圧が可能な後方法が選択され、圧迫範囲が限定されていて、脊柱管が広い場合には前方法が選択されます。
頚部脊柱管拡大術について |
|
|
|