ベーカー嚢腫(のうしゅ)とは?
膝の後ろにある滑液包といわれる袋で炎症が起こり、その袋に水が溜まることにより生ずる腫瘤(しゅりゅう)です。
滑液包は、関節が動くことにより生じる腱や靱帯の摩擦や機械的刺激を少なくするための潤滑油(滑液といいます)がはいった袋で、様々な関節の近くに存在します。
膝関節にも10数個の滑液包があるといわれています。
歴史的にベーカーという人が結核菌による膝関節炎に合併する嚢腫として初めて紹介したため、このような名前がついています。
実際は、結核菌による関節炎よりも、変形性膝関節症、慢性関節リウマチといった膝の関節炎に合併して起こることが大半です。
何故起こるの?
膝の裏側にある内側腓腹筋滑液包と半腱様半膜様筋滑液包といわれる滑液包の炎症により起こってきます。
どのくらいの人に起こるの?
50歳代の女性に好発します。 |
どんな症状が出るの?
痛みは少なく、膝の裏がはれている、膝を曲げる際に圧迫感、違和感がある、といった症状が主なものです。
ただ、袋の中に溜まった水が多くなってくると、内圧が高くなって強く痛んだり、袋が破れて周囲の静脈炎を起こしたりすることがあります。
どのように診断するの?
整形外科医であれば、膝の後ろ側に液体のはいった袋があるかどうかを触診で判断できます。
ただ、判断が難しい場合もあり、その時はエコーやMRIの検査をします。
また、同様な検査で、他の軟部腫瘍との鑑別や嚢腫の広がりを調べることもあります。
どんな治療があるの?
特に症状が無ければ治療の必要はありませんが、膝関節の可動域制限や痛みなどある場合には穿刺を行います。
つまり注射器に針をつけて刺して、内容物を吸引します。
一回の穿刺で収まることもありますが、数日で再発を起こすことがあります。再発を繰り返すようなら穿刺後に炎症を抑える注射や飲み薬を用いますが、強い症状がなければ、時々穿刺を繰り返しながら経過を見ていく場合もよくありますし、関連する膝関節炎の治療を行えば消えていくこともあります。
手術的治療は侵襲が大きく、再発することもあるため、手術が行われることは多くありません。ただ、痛みが強い場合などには手術も考えます。
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